中学校、初登校日の朝がきた。
受験時代からずっと続けている朝公文を、今日も早起きして頑張るタン太。
4月は、中学校にお弁当を持っていかなくてはいけない。
お昼は学食もあるのだが、慣れるまではみんなで教室でお弁当を食べるとのこと。
フフフッ。何事も最初が肝心。タン太にお弁当作らせる大作戦。
今日はアメリカンなランチスタイル。
お弁当作りが、楽しくタン太の日課になる計画だ。
では、タン太くん、調理にトライ!
フライパンにオリーブ油を垂らしローズマリーを少々。
厚切りベーコンを入れ、粒胡椒を挽き、香ばしい焼き目をつける。
バケットに切り込みをいれ、熱々の厚切りベーコン、トマトスライス、庭で採れた新鮮なルッコラをはさみ、ワックスペーパーで包む。
十分に熱したあつあつポトフをスープジャーに入れる。
あとはバナナ1本、チーズブロック、ヨーグルトカップ。
それを茶色の紙袋に詰め込めば、気分はアメリカン。
こんなイメージ。
タン太、楽しそう。
朝勉強、完了!
お弁当作り、完了!
朝ごはん、完食!
(バケット&ピーナッツバター、ホットミルク)
さあ、着替えて出発だ!
ところが、その時だった…
グズグズ、ギャーギャー、グズグズ、ギャーギャー、
やれ、Yシャツのボタンがきつくてはまらないだの、襟がひっくり返って潜り込んだだの、スラックスがチクチクするだの、ネクタイがうまく結べないだのと、ありったけの文句を言い出す、タン太。
小学校生活は、トレーナーやジャージ、着心地重視の服ばっかりだったものね。
「なんでこんな制服着なくちゃなんないの〜〜!!あー、もうやだーーー!」
「ママー、袖がボタン止められない〜〜!襟が変、ママ〜直して〜」
なんか、Yシャツとブレザーがねじくれて、すごいことになっているぞ?
しかし、ここで手伝ってはいけない。
「ママも仕事行く準備しないとだからね。あー忙し、忙し。」
散々文句を言いながらもようやく、自分でなんとかしなくてはいけないとわかったようだ。
だまって、もがきながらも着ている。
「できた〜!」
「えらい!えらい! よし!行こうか!」
一本早い電車なら、駅まで送ってあげるという約束。
駅まで、車で数分。
「あの人も同じ制服だ! 一緒の電車だね」
外の景色を眺めながら行く。
ふと見ると、タン太は小学校の時からずっと使っている黄色い傘を持ってきている。
「傘…、今度、大人っぽいの買おうか?」
「なんで? これでいいよ」
フフフ、まだ子どもなんだなぁ。
そんなタン太も、いつかは黄色は嫌だっていうのかな…
駅に到着した。
「行ってらっしゃい。楽しんで来てね。」
「うん!」
「タン太、大好きだよ。」
「僕も! 行ってきます!」
改札へ駆けてゆく。
慣れない制服きて、慣れないローファー履いて、慣れない電車に乗って、慣れない道を歩き、初めてのクラスのドアを開けるんだ。
その時、どんな表情をしていることだろう。
いつも初めての時はママと一緒だった、赤ちゃんの頃。
初めてにっこり笑った顔、初めてママと呼んだ時、初めてミカンを食べた時の酸っぱい顔、初めてヨチヨチと歩いた時、初めてボタンをとめた得意げな顔、初めて……
もう、見ることもなくなるかな。
これからは、一人で歩いて行くんだね。
そして私は、私の行く場所、「海まち図書館」へ向かう。
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