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重症の春季カタルの息子を持つ たんたぬ。
角膜を損傷し、学校に行けなくなってしまった、タン太。
当時、他の人の体験を読みたかったけれど、ほとんどなかったので書いてみることにしました。
このブログが誰かの役に立ってくれたらいいな。
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毎日眼科クリニックに通い、様々な薬を試したがどれも効かず、症状は悪化するばかり。
これ以上の悪化は、失明の危険がある。
S先生からは大学病院を勧められた。
2020年6月緊急事態宣言の真っ只中で、大学病院に行くのはあまり気が進まなかったが、最終手段だった。
大学病院には9時の予約。余裕をみて、8:20に着いたけれど、駐車場はすでに長い車の列だった。あぁ、…読みが甘かった。みんさん、スタートから早いんだ。
コロナ禍の影響で各方面にあった入り口は閉鎖されて、一箇所に集約されていた。
そこには大きな最新式モニターがあり、検温していた。カメラが一人一人を映し出し、数字が歩く人と一緒に流れては消えていく。
それは国際空港を思い浮かべるような光景だった。
しかし、待つ。どこでも待つ。
駐車場で待ち、受付で待ち、診察で待つ。
待合室のソファーも密を避けるため、一つ飛ばしで席が少なく、座るのも、待つ。
すでに予約時間の3時間近く過ぎていて、お昼時だ。
タン太もお腹が減ってきてグズグズ言いはじめている。自動販売機でオレンジジュースを買う。
「こんなおいしいオレンジジュース初めて飲んだよ!!」
チビチビ飲んで楽しんでいる。タン太はかなり単純なのだ。
他の患者さんたちも苛立って、受付のスタッフにクレームを言っている。
スタッフは、謝るばかり。
ようやく番が来た。
タン太を診てくれたのは静かな落ち着いた感じの、男の先生だった。
優しくタン太に話しかけながら診察する。
「ちょっと痛いけど、ガマンしてね」
瞼をひっくり返す。これが、痛い先生と上手な先生の違いがはっきりとでるらしいのだ。
「瞼の裏に大きな石垣状の乳頭が増殖しています。ここですね。黒目の周りもかなり腫れています。」
大学病院のカメラは、クリニックと性能が全然違う。ものすごく細部まで映り込んでいる。
瞼の裏のぶつぶつの拡大。
それはまるで、筋子 そう、おにぎりに入っている具。その筋子が大量に瞼の裏にくっついているようだ。これが、眼球にあたり、擦れて傷をつける原因になっている。
黒目も濁りも、目の傷ついた部分もものすごく拡大されて、全部よく見える。
結構な傷だ。
大丈夫なのか、タン太?
視力は、どうなるの?
「角膜に傷ができてしまっていますね。一番怖いのは感染です。しかし、場所が中心より外れているので、視力には影響はありません。しっかり治療していきましょう」
そう言われて、少し安心した。
「治るまでどのくらい、かかりますか?」
「うーん… 数ヶ月みてください。」
え!数ヶ月?え?そんなにかかるの???
「数ヶ月ですか?」
「はい。角膜の傷が深いので、時間がかかります。」
あぁ…結構長いんだ。長くて2〜3数週間位だと思っていた。
学校も長期休みになっちゃうのかなあ…
これ以上の悪化は視力に関わること、炎症を早く抑えなければならないこと、点眼剤が効かない重症のため、ステロイド治療を選ぶことになった。
大学から出された薬は
プレドニゾロン5mg 1日4錠(ステロイド)
ガスター錠20mg 1日1錠(胃薬)
ムコスタ点眼液2% 朝・昼・夕・寝る前
フルメトロン点眼液0.1% 朝・昼・夕・寝る前
後でタン太が話てくれた。
「今日の先生ね、瞼ひっかり返すの、うまかったよ」
これから1週間おきに、大学病院に通うことになった。
毎週かぁ…
先が思いやられる。
タン太の生活
瞼は腫れ上がり、黒目が濁って、目やにが大量にでる。
朝起きても、大量の目ヤニで上下のまつ毛と瞼がガチガチに固まってくっついている状態で、目が開けられない。
まず濡れティッシュをかけてふやかす。少しずつ固まった目ヤニを柔らかくして取り目をわずかに開かせて点眼をする。
タン太は痛がるが、泣くこともできない(泣けば炎症が起きて重症化してしまう経験済み)
光が刺激になり激痛を与えるため、真っ暗闇の中での生活が続いた。食事も闇の中だった。
吸血鬼みたいな生活だ。
もちろん学校へは行けない。
マンガも、本も、テレビも、目を使う事は一切できないので、暗闇の中でただ耐えるだけ。
どんなに長く感じた事だろう。
少し調子がよくて痛みの少ない時は、YouTubeの朗読を聴かせていた。
YouTubeサイトは小さい頃から眠る前によくお世話になっていた。
宮澤賢治、夏目漱石、芥川龍之介、太宰治… 文豪たちの著作権の切れた物語が、美しい声で朗読されている。
銀河鉄道の夜、坊ちゃん、蜘蛛の糸、走れメロス… たくさん聞かせたなぁ。
タン太も、楽しんで聴いていた。
落語も好きだった。
寿限無、鈴ヶ森、初天神、何回聴かせてもゲラゲラ笑っていた。
そのうちに、いつの間にか覚えていて、自分で落語をするようにもなっていた。
学校へ行けないのは、心配だった。
光に当たれないのだから、学校どころか本さえ読めない。
しかし今は治療が優先。
勉強なんて、後からどうにでもなるだろう。小学校の勉強位、すぐに追いつくことができるだろうと、甘く考えていた。
…が、そんなに甘くはなかった。
つづきは
いままでのおはなし
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