いつも家に来る子がいる。
なぜか、毎日のように来る。
近所の友達、山田くんだ。
近所の友達、山田くんだ。
小学校がずっと一緒だった。
タン太が一貫校へ行ったので別々の中学校へ行く事になった。
ちょっと気になる、山田君。
小学校の頃から、よく遊んだ。
と、言っても1週間に1回位だろうか。
毎日くるようになったのは、中学校に行くようになってからしばらくした頃だ。
ちょっと気になる、山田君。
大豪邸
近所でも有名な大豪邸に住んでいる、山田くん。
車が何台もはいる大きな車庫。
広い敷地に、L字型の立派な家。
最新ゲームがたくさんあり、大型テレビで一緒に遊ばせてもらったこともある。
芝生のきれいな手入れされた庭には、スプリンクラーが設置されていて、そこでサッカーをしたこともあった。
それに比べ、うちは古ーい木造平屋建て、サザエさん型昭和住宅。
ハーブがたくさんの家庭菜園が少しあるだけ(見た目は雑草)
なぜ、わざわざ家へ? なおさら不思議。
わが家にはゲーム機がない
ゲーム機もない、テレビも アンテナが繋がっていない。
今どきの中学生が楽しめる家ではないのだった。
2人で、ただ
「リトマス紙!」
「鍵盤ハーモニカ!」
「非常階段!」
「メスシリンダー!」
ヘン声&ヘン顔で言い合いながら、笑い転げている。
不気味だ。
部活
地元中学はかなりのスポーツ強豪校だ。
文系タイプの山田くんが入部したのは、リコーダー部。
なんとも、微妙な部だ。
「山田くん、リコーダー好きなの?」
と、聞いてみる。
「いや、そんな好きでもないんですけど、なんか部活に入っていた方がいいかなと思って…」
真面目
性格はとっても真面目で、いつも
「おじゃまします」とか
「ありがとうございました」
とちゃんという。
小学生の頃も、学校ではイタズラするような男子たちに
「そんなことはしてはダメだ!」
と立ち向かっていたそうだ。
(体は小さい)
一番のいいところは、物を大切にする事だと、タン太は言っている。
知識量がものすごい
「やめてー!山田ーー!くすぐらないでーーー!」
「わぁー! タン太もくすぐりなしだって!」
と隣の部屋でバタバタやっている。
そんなドタバタじゃれ合いながら、
「コガシラネズミイルカはカリフォルニア湾北部に生息し、刺し網漁の犠牲になって、あと10頭も残っていないんだーーー!!」
などとわめいている、山田くんである。
静かになったなーと思っていると、中国を魏・呉・蜀に分けた図を書いて、
「諸葛亮孔明が…」
などと話している。
タン太も三国志には興味があるのだが、本を読むのも面倒らしい。
山田くんがわかりやすく解説してくれるのを喜んで聞いている。
気が合う2人だ。
家の前で待つことも…
電車に乗って帰ってくるタン太より、山田くんの方が帰りが早い。
そんな時は、家の前で待っている。
「タン太、もうすぐだから、家の中で待ってていいよ?」
「大丈夫です。じゃ、散歩がてら、駅まで歩いてみます」
そう行って、歩いていった。
どうしたんだろう。山田くん。
なんか、悩んでいるのだろうか。
新しい中学で、友だちできただろうか。
明るい子だから、大丈夫なタイプには見えるんだけど。
山田くんの家は、いつもおじいちゃんとおばあちゃんがいる。
低学年の小学生の弟もいる。
今日も家に来ていた。
2人でまた、転げまくってふざけて遊んでいた。
帰り際、タン太が山田くんに言った。
「明日、テニス部に入部届け出すんだ。
これから、あんまり時間なくなっちゃうんだよ。ごめん」
体育祭が終わったら友達と入部する約束をしていたらしい。
「うん、俺もリコーダー部だから、あまり来ないよ」
少し寂しそうに見えた。 …ような、気がした。
私に「おじゃましました」と丁寧に挨拶して帰っていく。
タン太が
「来週、月曜日、テニス部休みだよ!」
と叫んだ。
「リコーダー部がなかったらくるよ!」
と振り返って言った。
毎日はちょっと嫌だな…とか思っちゃってごめん、と山田くんの後ろ姿に、心の中で呟いた。
また、遊びにおいでね。
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